「国家主権」という思想(5) 篠田 英朗著

★★★第4章 国際立憲主義の進展と挫折★★★ ●二つの世界大戦のあいだ

・1910年代→楽観的国際関係

・1920年代→新しい国際法秩序→絶対主義万能論に修正→条約による私権の制限
 →主権の放棄ではない→国際的義務に主権国家が服する
→不戦条約→常設国際司法裁判所→ベルサイユ条約でドイツを敗訴

・①世界経済のブロック化②ファッシズムの台頭

・1920年代→知識人→絶対主戦論を攻撃→制限主権論、分割主権論

・20C後半の主権概念を準備

■1-シュミット主権論の含意

  • 例外状態に潜む主権者の挑戦
  • デュギー→主権→「神話への侵攻」と攻撃
    公共サービス提供する国家→恣意的命令を行う国家→かけ離れてる
  • ケルゼン→純粋法学→形式主義的理解→国内法に対する国際法の優位
    →シュミットの対抗馬
  • クレッペ→「法の主権」理論
  • 19Cの国家主権論は恰好の標的となった
  • シュミット→「政治神学」→「例外を決定する者が主権者である」
    極度な緊急状態において主権者は登場する→砲に代わって国家を支える
    →英米六件主義に敵愾心→「法の支配」」→欺瞞に満ちてる
  • 規則が例外を作る→のではく、例外が規則を作る
    危機の到来→旧来の法規範を根底から覆す→両大戦間期の世界情勢を予言
    新規な国際制度と深層で鬱屈し続けていた力との間の巨大な乖離

■2ーイギリスにおける国内的主権論

  • 多元主義の興亡
    ・多元主義→国家主権理論を標的に→社会を一元的に理解する国家主権概念の虚構を告発
    ・ラスキ→ヘーゲル的な有機的国家像が標的
        →国家→人間が忠誠を誓う団体の一つに過ぎない
           →ほか集団に命令を下すのではなく、調整期のでしかない
           →伝統的立憲主義→現実主義
           →国家主権=政府主権→「国家の政府とその臣民の関係」
           →主権→政府の形式的権力以上に認めない→ロック以来のイギリス政治思想と同じ
    ・1930年代→伝統的政治思想に対する幻滅→ラスキ→マルクス主義に接近
     国家を特定の経済階級と同一視→イギリスの多くに知識人の時代感覚
    →戦況権の著しい拡大、庶民院の権限拡大 被統治者の力拡大→ドイツ流国民主権路は
     ネズか無かった。
    ・多元主義→時代遅れに→世界に蔓延していた自由主義のの勝利の雰囲気が喪失
  • 主権としての憲法秩序
    「憲法主権」論
    ・リンゼイ→服従しているのは憲法→統一性 不可分性 至高性
          国家→共同体の器官に過ぎない
    ・ホールズ・ワース→イギリスの主権 憲法上の主権→共存
             →イギリスの伝統的政治思想の基板に沿っている。

■3ーイギリスにおける国際的主権論

  • 国際的な法の支配の興亡
    ・ケル→合衆国憲法制定の歴史→諸国家連邦の前例→世界政府を予兆(★寸評★)
    ・1789→第1回の合衆国議会は、アメリカ合衆国憲法に権利章典 (Bill of Rights) と呼ばれる第1修正から第10修正を付け加える件を審議し可決した。
    →「彼らは自由になり、支配権を持つようになった。それは、彼らが単一の主権的法
      の支配のもとに自らを置いたからであった。」
    ・国際戦争終焉→全ての諸国民に対する法の支配導入
    ・絶対主権の概念→神話と見なした
    ・主権国家→19Cの幻想
    ・ケル→大戦前夜、世界政府樹立構想を討議
  • カーの英米自由主義批判
    ・ユートピアにズム→ベンサム、ロック
     リアリズム→ヘーゲル、マルクス
    ・過去100年→英語圏が支配的集団形成→国際道徳→彼らの言い回しで設定
    ・国内で適用された諸原則を普遍的とする→国際関係にも適用→ユートピア
    ・英米思想の国際的適用を批判→リアリズム→ドイツ
    ・「危機の20年」→戦争防止が目的
    ・アメリカ、イギリスとドイツとの対話を目的、和解

■4ーアメリカにおける国内的主権論

  • 虚構としての主権
    ・国民的統一→守るべき→主権国家の論理
    ・主権の機能→主権が「法的秩序の必要条件」
    ・「国民主権(ドイツ)VS法の支配(英米)
    ・立憲主義の立場を維持→アメリカが優越した力を保持していることが前提
  • 主権の復権へ
    ・民主主義と専制主義の闘争→主権の曖昧さと関わっている余裕はない
    ・民主的立憲国家→カールシュミットの理論の代替理論、イデオロギー闘争→理論武装が必要
    ・民主主義国家の消滅を防ぐこと→国際社会の法秩序維持が委ねられていた。

■5-アメリカにおける国際的主権論

  • 合衆国の主権の国際社会への投影
    ・主権制限論→「国際法規則の拘束的性格の直接的結果」
          →あらゆる条約は主権の制限を含む
          →国際連盟に自らに属していた主権の権利を与える
          →国際舞台での法の支配→国際連盟は超国家か?
    ・国際社会における法的制約から逃れられない
     相互依存した世界→主権の新しい概念が生まれる
     ある承認された制限の中で行われた国家行動だけが正当化される
     絶対主権→時代遅れ→1930年代 批判しきれるものではない
     →世界中央権力しか、対応できない→合衆国システムを世界に適応
  • 主権の再認識へ

  ・国民主権 国際主権
  ・絶対主権→現実には誤り→非現実なものによって動かされる人々が現実につくっている
  ・人々の国際政治に対する態度
  ・領域国家の主権は20Cにも残る
  ・1930年代→ナショナリズム→主権は無視できなくなった
  ・両大戦間期→国際立憲主義→衰退

  • 両大戦間の国家主権論
思想的枠組み国内法秩序・国際法秩序のなかで制限的に運用される主権
思想的な挑戦者確立された法秩序の外の「例外」状態に真の主権が存すると言う思想
政治的な構図戦勝国がつくった既存の秩序をいじする英米を中心とする勢力(=制限主権論)
それに挑戦するドイツを中心とする勢力(=絶対主権論)
両大戦間期における
歴史的流れ
1920年代の戦勝国主導の国際秩序を肯定する制限主戦論から、1930年代の
既存の国際秩序に訪れた危機の時代を乗り切るための国家主権再認識の動きへの兆し

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