「国家主権」という思想(6) 篠田 英朗著

★★★第5章 国際立憲主義の停滞★★★ ●冷戦・脱植民地化の時代

・終戦~70年 冷戦激化~脱植民地化 新興国家誕生
・主権制限国家論の復活の兆し→「政治的現実主義」→共産主義国家 振興独立主権国家

■1ー第二次大戦直後の主権概念

  • 冷戦勃発前の主権論
    ・第二次大戦→主権国家原則の破綻(第一次大戦と同じ)→米英知識人
    ・主権制限→「法の支配」との調和
    ・法秩序と調和する主権概念
    ・国際組織加盟がアメリカの主権を損なうことはない
    ・第二次大戦後に広がった軍事同盟→主権の制限は当然視
    ・国連国際法委員会→「国家の権利と義務に関する宣言案14条」
    →「あらゆる国家は、国際法に沿って、また各国の主権は国際法の至高性に服する原則に沿って
     他国との関係を持つ義務を有する」
    ・西側諸国→主権の制限を思想的に支持
    ・「政治的現実主義」の台頭
  • モーゲンソーの主権論
    ・宥和政策を拒絶→政治的現実主義
    ・主権国家→「法的拘束から独立して最高法をつくり、法を執行する権威」
    「政府の政治的統制の質」が主権の問題を決定する
     自立的 内向的
    →法出向権力である「政府の質」によって決まる→分割主権論(英米)を否定
    ・人民主権を否定→アメリカ立憲主義の伝統にはんして、政府主権に帰結する。
    ・国際法→中心を持たない秩序
    ・主権の存在が空白→至高の権威または、軍事的闘争が決める。
     南北戦争は一例
    ・主権的権威を法的統御および政治的抑制に服させると、主権的権威を除去することと混同した
    ・民主的生体→「人ではなく法の政府」にしようとする→政治的権威の行使→責任が曖昧になった
    ・「国家を、個人の究極的な世俗的忠誠心の受け手として、最強の伽快適強制力として、また、
      ここの市民に法を授け施行する最高の権威として、法適用語で指定される。
    ・全ての国家→主権を持つ者として平等
    ・危機に際し→「決断」を行う→保障される主権概念
    ・冷戦期の「現実感覚」→モーゲンソーの「現実」
    →ナチズムを防げなかった「自由主義」に対する不信感
    シュミットを援用→シュミットと対決
    ・ウェストファリアの神話→歴史的変化への無関心、非西欧社会 非国家社会
                 非近代的社会への無関心を助長
    ・モゲンソーの消極的受容→世間論の形式化

■2ー主権平等原則と共産主義・新興独立諸国

  • 主権平等の時代

    ・法の前の平等を意味しない。「権利と義務の平等ではない」
  • 共産主義諸国の態度
    ・小国の利益の代弁者→拒否権発動
    ・ソ連→領内共和国の主権制限→実際→中央独裁体制
    ★寸評★
    プーチン体制も同じ。督戦隊の存在、小さな共和国の若者が徴兵され戦死
    現在世界→多極体制に向かっている→一極としてロシア用語→ウクライナ侵略を正当化
    ロシア革命前のナロードニキ運動の実態、抑圧された者への運動か?
    抑圧者でもあったのではないか?→ドフトエフスキーの農奴民への認識はどうであったか?
    →プーチ侵略を正当化するのではなく、ロシア連邦の解体が正しいのではないか?
    ・ハンガリー動乱→ハンガリー人民の主権の名の下にブルジョワ帝国主義に反対する。
  • 新興独立諸国の態度
    ・人民の自決→脱植民地化→民族自決権
    ・主権平等→国民主権原則
    ・天然資源に対する永久権
    ・脱植民地化の過程を超えて絶対主権へと、そして、経済的自決権の極端な形態
    ・国際法規則に従って制限される先進国の主権概念→新興国、社会主義諸国の主権概念
    ・先進国の制限主権概念→口を閉ざす
    ・80年代→共産主義諸国の国力低下→発展途上国→国営化ではなく先進国の資本を導入

■3-主権概念の形式化

  • イギリスにおける主権の形式化
    ・戦後のイギリス主権論→多元主義、制限主権の問題ではない
               →ヨーロッパ統合の問題
               →最初→積極的→フランス、西ドイツ主導→距離を置く
    ・シュワルツェンバーガー→主権平等→「法的」「消極的」主権の相互尊重
                →強国と事実上の依存関係→「主権不平等」
                →国連憲章の上位→「政治的」「積極的」主権が君臨
                →主権概念→時々の政治的力関係により、変化
    ・20C後半→ジレンマ→中身のない重要原則
    ・抜け出す二つの方法
     ①形式化
     ②ヒンズレーの主権→「政治共同体に最終的かつ絶対的な政治的権威が存在し
                どこにも他の最終的権威が存在しないと言う考え」と定義
                →社会と国家が一致したとき
    ・主権概念の探求→人々の関心を集めなくなる
  • アメリカにおける主権の形式化
    ・アメリカ政治学者→主権や信奉しない→否定もしない
    ・主権→権威の最高程度→「慣習的な形式的服従」「観察可能な実践」
    ・国民主義・主権→叱責の対象
     同時に→世界国家構想の危険性(人類を抑圧)
    ・アメリカ→法の支配の立場→ヨーロッパの主権国家の権力政治を修正を目指す
         →いまや、現実世界の側にたつ
    ・共産主義陣営 新興国家→主権概念の有効性を認める→形式的受任
冷戦期の国家主権論
基本的な前提国家は絶対主権を持ち、力を行使して、国益を追求する
特徴的な傾向国際関係の基礎単位である国家はすべて、形式的な原則論として絶対主権を持っているが、
国際政治の構造を説明するのは国家主権でなく、権力政治である。(形式論としての
国家主権論と、実態論としての政治分析の乖離)
特徴的な現象道徳的教義としての国家主権の植民地地域への付与、そして結果としての国民国家体系の
世界大の拡大によって、普遍的な国際社会が成立

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