「国家主権」という思想(7) 篠田 英朗著

★★★ 控訴審判決 10月19日(木)  公表午後6時 ★★★

★★★第6章 新しい国際立憲主義の萌芽★★★ ●1970年代~80年代

・戦後~70~80年代→政治的現実主義の台頭、共産主義と新興国の主権平等→下火になる
・英米の伝統的主権論の巻き返し→新しい国際立憲主義→国際社会でも国内社会でも共有される
 価値規範を強調する見方が隆盛する
 →国内社会とは異なった方法→国内社会と同じ価値規範を適用→国際的な法の支配の契機を
   形成使用とする態度→世界憲法、世界政府設立運動ではない
・国際社会→一定の価値規範があるのは自明→新たな課題
     →国際立憲主義の契機を見極め発展させる
・伝統的な英米思想の価値規範→擬人化した国家を経由せず→直接個人に適用する
・諸個人の権利=人権擁護(立憲主義の中心的価値規範)→直接自然人を対象として
                           国際社会で実現
・自由な経済活動の保障
・国家と市民社会の概念的区分を普遍的に貫く(人権擁護の理論的前提)
・第一節→イギリス学派の国際社会論 第二節→アメリカにおける国際関係論
 第三節→国際法領域の新しい立憲主義の思考枠組み

■1-主権と国際社会論

  • イギリス学派と主権の再評価
    ・1972年→EC加盟
    ・主流派→実利目的→主権行使 「経済的主権の制限」 を提唱
    →変化→加入是非の国民投票 EC法の国内法に対する優越性→議会主権論理を変質
    ・大英帝国時代→自らの主権を自明視→他国主権制限
    ・20C後半→自国主権の尊重を訴える→国力低下
    ・「イギリス学派」→主権概念を維持→国際規則・原則の枠組みで把握
    ・主権→法の上位の至高性と理解
    ・主権国家→「国際法のあらゆる現存の規則と義務に服する」
    ・主権国家と結びついた国際社会の存在→「国際政治システムの外側では存在し得ない」
    ・憲法→社会の諸個人の同意が必要 国際法→構成主体である諸酷寒同意が必要
    ・「前法律的な教義」→国際法を支える→政治理論における社会契約に相当
     →国際社会の立憲主義的基盤
    ・主権の2側面→①至高性②個別性→不可分
    ・主権→国際社会加入の必要条件
    ・国際秩序→法出向権力を持った権威が国家の上に存在しなくとも達成される
         →★寸評★→ロシアのウクライナ侵略→国際秩序の崩壊危機にある
              →「達成される」のでなく、達成され合い場合は「国際秩序」
               は崩壊する
             →国際連盟の崩壊、という経験を体験した。
    ・イギリス学派→主権→国際秩序と対立しない→その基礎と位置づけた。
  • ブルの国際社会論
    ・主権→秩序各欄要素ではない→社会が維持しようとする原則
    ・豊かな産業諸国の秩序への専心→貧しい非産業社会の正義の変革への専心→との衝突
    →主権理解分裂
    ・初期イギリス学派→「国内的類推」「国家中心主義的見方 ]
    ・80年代→人権規範を核とする自由主義的価値規範→国際社会に直接適用させるかが
                             問題となった

■2ー主権と構造主義及びレジューム論

  • 国際関係学の処理論における主権の形式化
    ・1970年代アメリカ国際関係学→相互依存論
                    →多国籍企業に着目→主権国家の衰退を論じる
                    →経済活動→領域主権国家を浸食を論じる
                    →新古典派経済学のい成果→国際関係論に取り入れられた
    ・「構造的現実主義」→主権は侮蔑の対象→ウォルツ・「新現実主義」
              →二つの超大国の2極構造と規定→主権の絶対性は無意味
              →形式効力は無視できず(小単位として認める)
              →主権に与えられた役割→構造を構成する行為者の単位を設定する
               形式的なもの
    ・「構造的現実主義」の後→国際レジーム論→親現実論と新自由主義の二面をもつ
    ・国際統治機構は存在しないが→何らかの「規則」「レジーム」「制度」
     あるいは「構造」が主権国家の社会を構成している
    ・主権は所与の者として存在する
    ※国際レジーム→相互依存が進んだ国際社会において、特定のある問題(争点)について創出
            された国際関係における枠組みをいう。
           →国際関係の所与の争点領域(あるいは問題領域)における、
            アクター[行為主体]の期待が収斂するところの明示的もしくは
            暗黙の原則・規範・ルール・及び意思決定手続きの総体

■3ー国家主権の領域と市民社会の領域

  • 「新しい国際立憲主義」(20C後半)→上位の国際機関により統御されない
                      →一定の規範に服する
                      →経済活動に制限される→経済制裁
                      →人権に制限される→イデオロギー制限
    →市民活動によって国家主権が制限される
    →アイヌ先住民のプロパガンダに利用された
    →中国が金をばら撒き、国際機関を支配しようとしている
    →国連の形骸化
    ★寸評★ 国際連盟脱退の苦い経験  常任理事国ロシアのウクライナ戦争
                      →どういう結末になるか
    ・「市民社会」「国家」に対峙→20c後半
      両者の概念区分→ヘーゲル
    ・原初的な存在である諸個人→人工的な存在である政治社会が向き合わされる
    ・20C後半→社会契約論の発送減退
    ・国家的存在→社会的存在を区分して対置
    ・国家論 市民社会論→伝統的な自由主義と矛盾なく結びつける→大きな課題
    ・自由主義的な世界像実現→主権国家 市民社会の分離が決定的に重要
    →公的領域→国家に統治活動への権限付与 私的領域→自由な市民活動を保障
    →新しい立憲主義の理論的基盤
    ・1970年代英米→「主権免除」に関する動きを分析
  • 主権免除論の変化と国際立憲主義
    ・主権免除→国家の独立性維持→外国政府の代表者を国内法で裁くことが出来ない(国際法)
    ・非政府団体活動が脅かされる。→政府機関であれば自由に契約破棄できる
     →企業活動の安定性が無くなる
    ・政府と社会の分離と言う自由主義の命題が崩壊→★寸評★→中国との関係
    ・対処法→制限的主権免除
    ・主権免除→内政不干渉と同意→19C 自由放任主義経済
     司法権は立法権 行政権を浸食しない
    ・1946年→「連邦不法行為損害賠償法」→アメリカ国内でもっていた合衆国政府
        主権免除の権利を否定
    ・イギリス国内法→1947年→「王位訴訟手続法」→国王(政府)が直接訴えられる
    ・経済分野での活動領域→政府に対する訴訟が増えた。→外国政府の主権免除とは関係ない
    ・1970年代後半→国際法上の制限的主権免除論
    ・国家主権の有無ではない→国際社会が標榜する規則が公的領域と私的領域の境界線を決定する
    ・新しい国際立憲主義
  • 人権規範の進展
    ・国際人権法・国際人道法→武力紛争→最低限の人権を保障する
    ・国際社会→国内社会と同じ価値規範によって東征される→併存ではなく一続き
    ・国家主権→市民社会の不可侵の領域を侵すのではなく、保護する物乞い
    ・国家擬人説に依拠したあらたな憲法システムを必要としない
  • 新しい国際立憲主義の登場
歴史的な新しさ国家擬人説の基づく「国内的類推」に依拠した国際社会論の拒絶
思想的な前提国内社会の立憲主義と同じ価値規範(諸個人の権利=人権を基盤とする自由主義的価値規範)
に基づく立憲主義の国際社会における直接適用の可能性
特徴的な付帯的現象人権を持つ個人の自由な活動によって形成される市民社会を、主権国家の領域と対比させる議論の台頭
政治的背景英米の伝統的価値観の再評価と、自由主義陣営の優位による冷戦構造の変化

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