「国家主権」という思想(4)篠田 英朗 著

★★★第3章 国際連盟と国際立憲主義の登場★★★ 20世紀の始まり

第一次大戦→1815年ウィーン条約→大国主導の協調体制の信頼喪失
     →国家主権絶対論に対する反省機運→新国際社会の法秩序の中に
      国家主権を規則づける→国際立憲主義(米英主導→ドイツ思想と対立)

■1-イギリスにおける国際連盟設立時の議論

  • 国際法学者による斬新主義的国際組織論  
     ・第一次大戦後イギリス→世界政府設立ではなく斬新的に制限

   ・ドイツ思想としての絶対主権論
   ・19C「真の主権者捜し」→欧米において終焉してゆく
   ・国家権威→神聖なもの→ヘーゲル→民主主義 立憲主義政府の理念に反する

   ・国際連盟→文化的基盤がない「根拠無き夢」→「制限」と「放棄」を区別→容認

  • ドイツ思想としての絶対主権論
    ・国際連盟→主権理論誌に分裂をもたらすが→現実世界から大きく飛躍しない
    ・ドイツ→絶対主権論→他国を犠牲にする主権の全体的保持や拡大を主要な目的とした
    ・イギリス→主権 独立→額面通りの意味は無い→道徳的であり法的権利ではない
    ・国際連盟→実際の修正された主権概念→大きな変化をもたらさない。
    ・アーネスト・バーカー→国際連盟→主権、独立の放棄→①戦争する権利放棄②戦争する義務
    ・イギリス→①主権は容易に宣言される
          ②斬新主義的に主権を制限する
          ③自国の立憲主義的政治思想の伝統と結びつける
          ④ドイツ思想に対する蔑視
         →戦勝国を前提としていた

■2ーアメリカにおける国際連盟設立時の議論

  • モンロウー・ドクトリンの拡張
    ・アメリカ→第一次大戦→堕落したヨーロッパ国際政治の悲劇
         →世界を刷新する使命感
    ・規約21条→連盟がモンロー・ドクトリンを侵害しない→旧世界からの干渉を拒否
    ・神の恩寵をい受けた理想郷
    ・理念擁護→アメリカの介入主義的行動を正当化→集団的安全保障の思想的深淵
         →国際関係のって秩序維持システム
    ・19Cドイツ国法学→専制主義を招く危険な理論
    ・ドイツ主権→武力で他国を蹂躙
     アメリカ主権→国際法 国際道議 国際礼儀 国際隣人感情で制御された主権
    →ウィリアム・タクト
  • 主権のアメリカ的理解
    ・アメリカ合衆国→主権の制限で成立→絶対主権を放棄
    ・国際連盟→超主権
    ・制限を超えた主権→合衆国憲法と一致しない
    ・ヨーロッパ→国家や教会の真剣理論を放棄
    ・人類→分割主権論を承認する→世界政府
  • 判ウイルソン派の議論
    ・米兵を派遣する権利→守るべき主権
    ・ウィルソン→モンロー主義の拡大→国際連盟
    ・反ウィルソン→旧大陸の伝統的な国際関係における大国支配の制度化
           →諸国家に対する超国家とみていた。
    ・デヴィット・ヒル→絶対主権に反対→フランス革命→人権の否定→アメリカ革命の否定

■3-ウィルソンとランシング

  • ウィルソン→民族自決権を国際社会に広めた
  • ウィルソンの主権論→「有機体の一般的生命力ではなく、諸組織の特定の創造的権力である」
         ・ヘーゲル流の有機体的国家論に抗して→古典的立憲主義の枠内にある。
     ・指揮するものと指揮されるものの差異の過程にこそある→統治者と被統治者が同一でない
     ・「共同体の慣習的な服従」→主権の定義
    ・共同体の意思→法の基盤
    ・主権の対概念→制御(contorol)→共同体に属する→制憲権力
  • 「人間は、いつも自分たちのために決定を下す権利を持つ。・・・人々がそのもとで
    生活する政府が、そのような原則に依拠しているか、或いはそのような形態によって
    運営されているかは、彼らの安全や幸福に影響を与えるだろう。端的に言って、
    政治的自由とは、統治される者たちが彼ら自身の利益に政府を適合させる権利なのである。
    ・社会的進歩への信頼→国際主義の基盤
    ・「全ての人民は、彼らがそのもとで生きる主権を選択する権利を持つ。」
  • ランシングの主権論
    主権論→力の概念に依拠
    国家のなかの主権→「責任を負うことなく、国家内部のあらゆる事柄をなす、(主権の)
             所有者が持つ自然的な能力の程度に応じた権力」と定義
             「その所有者が、国家を構成するあらゆる個人を、主権的意思に従属させる
    とき、主権は現実のものとなる。」
              →「ほかのいかなる力にも優る卓越した物理的力の所有」から生まれる。
              →単に「凶暴な力の適用あるいは脅迫」によって行使される。
             →国家の主権を否定→主権が国家によって所有されることはない
             →「物理的強さを所有する国家のなかの個人あるいは諸個人の集団」に
               よってのみ所有される。
             →主権の物象化
  • ウィルソンとランシングの対立
    ・ランシング→民族自決の適用に反対→諸国民の平等と矛盾
    ・紛争解決→武力不可
    ・ウィルソン→国際立憲主義者→主権概念を制限
    ・ランシング→政治とは法を超えた世界
    ・絶対主権の存在こそが真に現実的なものである、と言う信念
     →国際社会の「憲法」を作成できなかった。
    ・ウィルソン→自ら制定する立憲主義的秩序→新たな現実となる
    ・ランシング→立憲主義的原則→法理論の領域にある→現実適用→混乱
    ・世界大戦で得た力で国際立憲的原則を打ち立てるべし→ウィルソン
    ・ウィルソン→英米国際思想の支配的流れ→完全に機能することはなかった
  • ★寸評★
    難解と言うほどでもないが、私には難しかったし、苦痛であった。
    暑さにかまけて2ヶ月サボった。ようやく道半ば。
    国際連盟設立の思想的背景が書かれている。世界政府、戦争放棄の萌芽。

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